構造1-1
基礎有機化学6

図6

<構造式の表記>
 有機化合物は複雑な構造をもつものも多く、その構造が正確に伝わるように紙上の式であらわすにはいくつかの基本的なルールがある。このちょっとしたルールを頭に入れておけば、複雑な分子構造も自在に書き表すことができ、また逆に構造表記から実際の分子を復元することができる。実際の分子は立体的な三次元構造をとっているが、その立体構造の表記については後に述べ、ここでは平面表記のみを扱う。
 構造式は、構成原子と結合の組み合わせからできており、その略記法には結合を省略する方法と原子を省略する二法がある。

 結合省略法:まず各炭素原子ごとに1ユニットとし、メチル基ならば「CH3」とまとめたうえで、ユニットをそのまま横に並べていく(これを主鎖とする)方法。横並びのユニット間の結合も省略すると原子記号と原子数の添え字だけで構造表記できるので文章中に構造を入れたい場合に便利。枝分れ化合物の場合は、枝を主鎖から上下にのばすか、紛らわしくない場合は、主鎖内にカッコつきで組み込むこともある。この場合、カッコ内の基は直左の炭素原子に結合しているとみなす。また、同じ基が複数ある場合、因数分解の要領でカッコでくくることができる。このように結合省略法は、原子をすべて残して結合を省略する方法であるが、省略できるのは主鎖の横方向の単結合のみであり、上下方向の結合と主鎖内でも多重結合は省略できないことに注意する(エチレンを「CH2CH2」としてはだめ)。

 原子省略法:主結合のみを残して炭素と水素および炭素-水素間結合を省略してしまう方法。炭化水素分子は単なる折れ線になってしまい、複雑な環構造も自在に書くことができる。この場合、折れ線の末端と屈折点には炭素が存在し、その炭素の原子価は水素で満たされていると考える。酸素、窒素など炭素以外の原子は省略不可。また炭素以外の原子に結合した水素も省略できない。折れ線の屈折点で炭素を表すので、直鎖の炭素鎖は一直線(途中の炭素数がわからなくなる)ではなく、ジグザグに書かねばならない。


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