コラム11
基礎有機化学61

<温厚なラジカル>
 ラジカルは化学的に非常に活性であり、通常は発生するとすぐに他の分子と反応してしまうため、そのものを安定に取り出すことは難しい。ところが、分子内にラジカルを安定化する要素があると、例外的に安定に存在できるものもある。

 二重結合に隣接するラジカルすなわちアリルラジカルは電子の非局在化により安定化されている。同じ理由で、ベンゼン環に隣接するラジカル、ベンジルラジカルも安定なラジカルである。ラジカル種がはじめて安定に存在できることが明らかにされたのはトリフェニルメチルラジカルであり、この中心ラジカルは3個のベンゼン環との共鳴効果によりとても安定化されている。また、DPPHラジカルと略される2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジルラジカルは大変安定であり、そのものが試薬として販売されている。


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