ロータン(rotane)、コロナン(coronane)という分子があります。構造はそれぞれ下に書いたとおりで、ロータンは、シクロアルカンの各頂点に三員環がスピロ結合したもの、コロナンはシクロアルカンの各辺に別のシクロアルカンが縮環したものです。両者は、正多角形の頂点を共有しているのと辺を共有しているのとの違いで、兄弟のような関係にあります。
さて、こういう面白い形の分子をどうやって合成するかという話なのですが、例によってそんなものなんの役にたつのか、という議論はなしです(^^;。
こういう分子をつくるのはさぞや難しいだろうと思われますが、このロータンから一挙にコロナンができるのですね、これが。といってももちろんそのままのものができるわけではないのですが(^^;。[6]rotane と [6,4]coronane は、ちょうど異性体の関係にあります(どちらも分子式は、C18H24)から、パタパタパタと連続した転位反応を起こさせれば変換ができそうに思えますね。
実際の反応は、下記のようで、ロータン型のアルコールを脱水条件(SOCl2/Py)で処理すると、OH-がぬけて根元の炭素に+イオンができ、そこへ左上の三角のC-C結合が切れて+イオンのところと新たに結合をつくります(いわゆる1,2-シフトというやつ)。そうすると左上の四角が一個できて、+イオンがひとつ左下に移動します。そこへ、左下の三角が切れて転位して.....、とパタパタ連続的に転位がおきて、最終的に、5個目の四角ができたところで行き止まり(^^;になり、そこにOH-が付加してコロナン型アルコールになります。う〜む、こんな稚拙な説明でわかるかしらん。
どうです、きれいすぎて話がうますぎるでしょう。こんな反応を一度でいいからやってみたいものです。
カルボカチオンの転位はいろいろ面白いのがありまして、古典的なのでは、Wagner-Meerwein 転位が有名ですね。ちょっと構造を描くのは至難の技ですが、ボルナン骨格からカンファン骨格への転位は(私は「だましぶね転位」とよんでいます(^^;)、初めてみたときは不思議でたまりませんでした。メルクインデクスをおもちの方は後ろの人名反応の項で引いて見てください。