米アップジョン社の研究グループがあるバクテリアの培養液から単離した一種の脂肪酸アミドなのですが、ご覧のように恐竜の背中のようにシクロプロパン環がならんでいます。生合成的には、C18のポリエン酸が生成したあとでメチオニン由来のC1ユニットが順次導入されていくと推定されています。なんで途中一ヶ所飛んでいるのでしょうね?(^^;
構造も驚くべきですが、もっと驚いたことは、この化合物が血液中のHDLからVLDL、LDLへアシルコレステロールを転移させるタンパク質、CETP(choresteryl ester transfer protein)の強力な阻害物質として単離されたことです。末梢から肝臓へコレステロールを逆転送するHDLは血中コレステロール濃度を低下させるのに寄与していますが、そこからLDLにコレステロールエステルが転移してしまうと、また組織に運ばれていってしまいます。この転移を触媒するCETPの活性を抑えると血中のコレステロール値を下げ、粥状動脈硬化などの血管性疾患を防ぐことができることがわかっています。
こういう臨床上有用なポテンシャルをもつ物質をスクリーニングしていて、こんなに変わった化合物がひっかかってきたなんて話がうますぎますよね。
M.S.Kuo et al., J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 10629-10634.