第2期 2014年11月1日(土)~3日(月)
徳島駅~第18番恩山寺~第23番薬王寺~牟岐駅 86.7 km (累計 183.4 km)
0.出発まで
1.2014年10月30日(木)札幌=東京=高知
2.2014年11月1日(土)高知=徳島~18番恩山寺~19番立江寺~立江=阿南
3.2014年11月2日(日)阿南=立江~20番鶴林寺~22番平等寺~新野=阿南
4.2014年11月3日(月)阿南=新野~23番薬王寺~牟岐=徳島
5.2014年11月4日(火)徳島=神戸=札幌
0.出発まで
今回は恒例の高知出張の後なので、コインロッカーに出張荷物を預けて期限の3日間のうちに戻ってこなければならないという制約がある。前回は徳島駅で終わっているので、高知から徳島に移動して荷物を預け、3日後に戻ってくるとなると、日和佐にある23番薬王寺までが妥当な行程となる。ただ、その次の回のことを考えるとできればその先の牟岐くらいまで進んでおきたい。次の回の問題点は、23番から室戸岬にある24番までが遠く、その間に宿がほとんどないので行程がかなり制約されることにある。23番から24番までの中継点としては尾崎に泊まるのが普通だが、徳島入りした翌日から歩くとして牟岐~尾崎は45.3 kmあるので1日では少し厳しい。前日に鯖瀬まで4.4 km歩いて鯖大師泊まりにすれば翌日が40.9 kmでこれくらいにしておきたい。徳島発14:20のむろと3号に乗れば15:31の牟岐到着から鯖瀬まで歩いても16時半には着けるだろうという目算だ。
高知の仕事の後懇親会に出た翌朝の出発となるが、5:00のJRはさすがにしんどいのでできれば8:00のバスにしたい。10:50に徳島駅に着いて歩き始めれば18番、19番と回ってその日は立江泊まりが妥当だろう。その先の宿は生名の金子やまでなく、さらに2時間かかるのでその日に行くにはちょっと無理だ。翌日は立江を朝出ると20番、21番と山を越えて、22番あたりで泊まることになる。となると宿の選択肢は立江の鮒の里と22番近くの山茶花しかない。どちらも評判の良い宿なので泊まってもいいが、しかしそれなら立江には駅があるし22番も新野駅が近いので、JRでそれぞれ徳島にもどれば徳島駅近くのホテルに連泊して荷物がおけるし、そもそも出張の荷物をコインロッカーに預けなくても済む。JRでの往復は相当無駄ではあるがなと考えて、立江と新野の中間にある阿南泊まりを思いつく。阿南~立江は15分、阿南~新野は20分で徳島へ戻るよりよほど効率がよい。うまいことに阿南には大浴場つきのよさげなホテルもある。というわけで即決。10/17に阿南プラザインを2泊確保。なんと自前webページから予約できた。最終日は徳島に夕方もどっても当日帰れないので、大浴場つきで評判の良い徳島駅前のサンルートを9/23に確保してある。
1.2014年10月30日(木) 札幌=東京=高知
コースタイム
出発地,出発時刻,便名,到着時刻,到着地(歩行距離, 所要時間),滞在時間
あいの里教育大,834,2540M,858,桑園
桑園,905,3872M,947,新千歳空港
新千歳,1200,JAL508,1340,羽田
羽田,1440,JAL1489,1610,高知
高知空港,1620,連絡バス,1653,高知橋
札幌=東京=高知
朝8:34の学園都市線で出発。出張の荷物の上にお遍路用品と杖と笠をもたねばならないので大荷物だ。キャリーバッグに杖をさして風呂敷に包んだ笠をハンドルに引っ掛けるとコンパクトにまとまって転がせることを発見。PC他はリュックに入れて背負う。3両編成の先頭車に立つ。平日なので新川、八軒で満員になる。桑園でエレベータに乗り合わせたおっさんに「お遍路さんですか?」と声かけられびっくり。「そうです」「いいですねえ。もう長いんですか?」「いや今年始めたばかりです」。それだけだったけど何かほっこり。杖と笠を見る人が見れば一目瞭然だ。もう少しちゃんと答えればよかったとあとから思う。もう遍路旅は始まっているのだ。
桑園からいつものエアポート。札幌で大方の客が入れ替わって着席。眠くなる。千歳でまず荷物を預ける。列の前に認知っぽいばあさんがいて、連れのじいさんたちがしっかり連れて歩かないからおいて行かれている。大丈夫か。タッチ&ゴーでチケットレスなのでJALで間違いないですかと確認されてX線検査へ。キャリーバッグ、杖、笠の3点をカウンターで預ける。笠はビニール袋へ、杖は後ろの扉の奥から青い長箱(JASと書いてある)をもってきてこれに入れますからと、ていねいだ。身軽になった。まだたっぷり時間がある。現金を補充しておこうとCDコーナーをさがすとANA側の通路にあった。左から、ゆうちょ、東京スター、セブン、イオンの順に4台並んでいる。手荷物検査場でPCだけ出したらX線でリュック内の缶ペンが引っかかった。開けていいですかと言われて中身の確認。係員がしげしげとみて、線香ですね。はい。ベティーズの缶ペンにライターとロウソクと線香入れてあるのは考えてみると怪しいか。開けたままでもう一度X線を通して放免。プラ容器じゃなくて金属だったのがまずかったかな。帰りは最初から出さないとだめだな、というかライター以外は手荷物に預けてしまえばいいのか。
快晴で暖かく、搭乗待合室でのんびり座っていると眠くなる。サンドイッチとお茶を買って軽い昼食とする。羽田行きB767は満席。定時到着。高知行き3番ゲートまでの遠いこと。900 mとかある。東京も快晴で暖かい。高知行きB737-800は60%くらいの乗り。山側へ大きく迂回して北側から高知空港へ定時に着陸。荷物はターンテーブルが回り始めてすぐに係員が青い箱を手に持って入ってきて地上係員に渡す。見ていると名前を呼ばれた。そこで箱から出してくれる。長箱内に紐でしばって固定してあるのは前回のANAと同じ。プチプチとビニール袋でぐるぐるになった笠とキャリーバッグもすぐに出てきて引き取る。市内行きバスは16:20発。券売機で720円の切符を買う。下の荷物入れにキャリーバッグと梱包のままの笠を預け、杖はもって乗る。空いている。いつものようにどこそこのホテルはどこで降りろと案内放送がすこぶるていねいだ。はりまや橋ターミナルの次に右折して以前の観光センター前が北はりまや橋という停留所名に変わっていた。
高知橋で2人下車。川沿いを歩いて定宿のツーリストインへ。603室。いつもながらシングルルームの狭いこと。ベッドと机の間がほとんどなく息が詰まる。すぐに外へ出る。この季節は17時を過ぎるとすぐに暗くなる。上着を着なくてもいいくらいの暖かさだ。ぶらぶらと歩いてはりまや橋へ。近くの立派な店構えの司本店に定食のメニューが出ていたのでふらりとはいってしまう。時間が早いのでがらがらだ。1階が先客女2名。その後、3組くらい次々に来店。黒潮定食2600円という一番高いのを頼む。カツオたたき3切れ、ウツボたたき2切れ、クジラフライ串、カツオコロッケ、どろめ酢、クジラの小鉢他。ビール2杯。まあまあ。近くのファミマで缶ビールと保存食用にスティックチョコパン6本入りがあったので買っておく。
夕食
2.2014年11月1日(土) 高知=徳島~18番恩山寺~19番立江寺~立江=阿南
コースタイム
出発地,出発時刻,便名,到着時刻,到着地(歩行距離, 所要時間),滞在時間
高知駅,800,高知徳島EXP101,1050,徳島駅
徳島駅,1105,,1336,18番恩山寺(12.1 km, 2:31),0:24
18番,1400,,1502,19番立江寺(4.4 km, 1:02),0:14
19番,1516,,1522,立江駅(0.5 km, 0:06)
立江,1526,557D,1539,阿南
高知駅=徳島駅
朝6時起床。雨の予報だったが幸い降ってはおらずどんよりと曇っている。6:35に階下に降りて行ったら食事処はまだ開いていなくて、ばあさんが一人並んでいる。何も聞いてないのに、まだ係りの人がいいと言うまではいれないの、と説明してくれる。この人、昨朝もカウンター席のはじにいた人だ。常連なのか。後からきた女性にも同じ説明をしている。結局オープンしたのは6:45。定刻より早く開けていたという昨日小耳にはさんだ話はガセネタだったのか。今朝はどんどん人がきて満席になった。メニューは大同小異なので前日と同質同量に。7:00にもどって荷造り。遍路用品はリュックへ、PC他仕事用品はすべてキャリーバッグへしまう。上は半袖Tシャツに薄手上衣、下は黒ジャージにする。朝のトイレはめずらしく順調に完了。7:30過ぎにチェックアウト。笠は結局梱包のまま手に持って出る。
高知駅北口のバス乗り場の一番奥の9番乗り場から徳島行きは出発する。すでに何人か人が並んでいる。先に広島行きが前の方にはいって半分の人がそちらへ。発車8分前に徳島行き高知県交通バスが入線して10人くらいが乗車した。運転手が乗車券をファイル照合チェックして回収する。荷物は各自荷物室に収納する。web予約しておいた運転席後ろの1C席はきわめて見晴らしが良く、正解だった。
徳島行きバス
吉野川SA
定時出発。はりまや橋で6人、一宮営業所で5人乗車。大阪行き、広島行きが同時刻発で続行運転している。高知道にはいって川之江まで北上し徳島道へ右折、あとはほぼ東進。山間で時折雨がぱらつく。途中吉野川SAで休憩(9:25-9:40)。車外へ出て屈伸。連休初日で売店は結構込み合っている。一回りしたけどめぼしいものはない。発車してさらに東進、途中左手に熊谷寺山門がちらりと見えて懐かしかった。上板で1名下車、徳島市にはいって鈴江2名、徳島大1名下車。10:45徳島駅着。
まずはコインロッカーに荷物を預ける。紙幣をくずすのにお茶を買う。駅地下のロッカー室へ。エスカレータを降りて場所が分からず一回り。入口がわかりにくく中も意外と狭い。入口にちゃんと両替機があった。各種サイズがあり半分くらい埋まっている。300円の手ごろなのにキャリーバッグを入れ、杖を袋から出し、笠の梱包をはずしビニールは捨てる。薄手上衣を白衣に着替える。トイレに寄ってから一階に上がり出発。
徳島駅~18番恩山寺
徳島は曇り空で雨が降り出しそう。歩き出すと久々に笠がぎしぎしいう感触が懐かしい。駅前を左手に進み、JR線をくぐって国道55号へ。以前学会で来たときにこのへんは歩いたことがある。右折して右側歩道をどんどん南下する。町中の大きな通りの歩道歩き。ときどき自転車がくるほかはほとんど歩行者もいない。車ばかり多い。昼時で腹が減ってきたのでコンビニで何か買おうと思うが見当たらない。右手奥にセブンイレブンがあったけどなんとなく見逃し、その先のローソンにはいっておにぎりを2個買う。店のおばちゃんが、歩きですか、がんばってください、と。うれしい。店の近くには食べる場所がないので持って歩く。手ごろな公園でもないかなと思うがそううまくはいかない。二つ目のやや大きな橋、大野橋の堤防に荷物をおろして昼食とする。橋を通る車からは丸見えだがしかたがない。
歩いていると暑くなり黒ジャージの裾をまくる。これができるので便利だ。曇り空で笠もいらないので脱いでリュックの背にくくりつけることにする。これでなかなか快適になった。途中右手にある四国電機という名の遍路用品店は立派で遍路休憩所でもある。勝浦川を渡って牟岐線を越え左手に中田駅を見る。前方に初めて歩き遍路女性2人連れが見える。のろのろしていてあっというまに追いつく。こんにちはと声をかける。まだ若いのにしんどそうで、あとどれくらいですか、という。30分ちょっとじゃないですか、地図もってないんですか、ときくと、遍路地図はもっていた。もう疲れたので恩山寺で終わりにするとのこと。なんと軟弱な。がんばってくださいと先へ行く。芝生川を渡ってすぐ、遍路シールが右を指す。久々の遍路シールがうれしい。やっと車道を離れ細道に。ぐんと歩きやすい。義経上陸地の大きな碑があらわれる。屋島攻めのときだろうか。
国道から横道にはいる
義経上陸地の碑
恩山寺への入口手前で前にこんどはじいさん遍路が歩いている。同じくらいのペースなので抜くか後ろにつくか迷う。左手に大きな民宿ちばがあり、ゆるい坂道を上って行って突き当たりの手前で右手道路下の柿の木の間から、お遍路さん柿持ってって、とおばちゃんの声がかかる。枝に飛びついて柿を枝ごと取って投げてくれる。次々に取るので、もういいです、というと、前の人にもあげてお連れさんでしょ、と。じいさんのことだ。連れじゃないんだけど。結局2個ずつと4個も渡される。みっしりとして重い。まだ固そうだしどうやって食べろというんだろう。そうこうしているうちにじいさんは先へ行っちゃったし。しかたないのでリュックにしまう。しかしありがたいことだ。今回初めてのお接待。小橋を渡って山裾に遍路用の歩道が分かれるのでそっちを歩くとほどなく大きな大師像横に出た。
恩山寺への分岐
柿をいただいた小橋
恩山寺入口
境内
本堂
大師堂
お大師さま
山門はなく、右手の石段を上ると境内に出る。人が結構きている。歩きの人は見当たらないけど。今回初めての札所なので段取りを思い出す。荷物をベンチに置き、必要なものを持ち出して、まず手洗い、手水鉢に水が流れていないのはマイナスだな。お参り。缶ペンケースはなかなか具合がいいが、やはり線香はいくらか折れていた。お経もすらすら読んで、石段手前を左手の納経所へ。例の2人連れが着いたところで、お疲れさま、と声をかける。そのあと写真を撮り合っていたので、そうだ柿食べませんかお接待にもらったので、と二つ渡す。やれやれ半分片付いたぞ。
18番恩山寺~19番立江寺
恩山寺から今度は車道の方を下る。左に大きくカーブしたところの右手に農作業の建物が数軒見えてきたところで、右手の細道へ行けと道しるべが指し示す。柿が見事になっている。このあたりはみかんも色づいている。緑の大きな実は何かと思ったら夏みかんだった。道はすぐに暗い竹林の中へ分け入り、そこを越えて開けたところへ出る。道が入り組んでいるが道標があるのでそれに従ってゆくと県道に出た。立江の近く右手にりっぱなお京塚がある。前に例のじいさんが歩いているのが見えてきたので、ここで少し休憩とする。
農家の作業場のようなところを歩く
竹林の道
お京塚
立江寺近くで遍路地図の赤線は左の川沿いを行くのに遍路シールは右を指している。どっちも距離的には大差ないので右へ行ってみる。すぐに左手に民宿鮒の里がある。雑多なデコレーションというか派手なつくりで、なるほどうわさの宿という感じ。交差点を左折して橋を渡ると立江市街で、すぐに立江寺に着いた。
山門ではなく横から入ると狭い境内に人が多い。団体もきている。阿波の関所寺ということでもっと大きな寺を予想していたら町中のせいか意外とコンパクトだ。なにかと話題の大きな宿坊とか駐車場とかはどこにあるんだろう。ここの手水鉢もほとんど水が流れていない。納経所では2人がかりで団体の納経帳と格闘中。運よく間に割り込ませてもらえた。
19番立江寺~立江駅=阿南
予定より1本早いJRに間に合いそうだったので、そこそこに立江寺を出る。町中を北上して右折するとすぐに小さな無人駅がある。駅舎はあるが券売機すらない。線路を渡って島式2面ホームへ上がるとすぐに単行気動車がくる。空いていて座れた。遍路風の人はいない。ワンマン仕様なのに整理券が出ないと思ったら車掌が乗務していた。車内精算すべきだったのだろうが、乗車時間が短くそのまま阿南へ。精算所で220円を払う。
立江駅
ここで雨がぱらついてきた。よくここまでもったものだ。駅からの斜め道を間違えて遠回りして国道沿いの今日の宿阿南プラザインへ。小さいけれど新しくきれい。フロントの女性も感じいい。3階の310号室。高知に比べれば十分広く居住性は良い。すぐに買い物に出る。左手の踏切を渡るとすぐにファミマがある。弁当の品数は少なくて幕の内と洋風弁当と唐揚げ弁当の三択。洋風弁当にした。明日の昼用のパンも買っておく。ホテルにもどって、フロントで明日5時半に出るけどドア開いてますよねと確認。16時半開始の風呂を待つ。すぐに行くと、なんと先客があってすでに脱衣所で洗濯機を回している。長期滞在客かな、連休なのに。それほど大きくはないけれど大浴場はやはり快適だ。
お接待の柿
3.2014年11月2日(日) 阿南=立江~20番鶴林寺~22番平等寺~新野=阿南
コースタイム
出発地,出発時刻,便名,到着時刻,到着地(歩行距離, 所要時間),滞在時間
阿南,542,4520D,555,立江
立江駅,557,,750,生名(10.8 km, 1:53),0:05
生名,755,,850,20番鶴林寺(3.0 km, 0:55),0:21
20番,911,,941,水井橋(2.3 km, 0:30)
水井橋,941,,1052,21番太龍寺(4.2 km, 1:11)
太龍寺駅,1100,,1110,山麓駅,1120,,1130,太龍寺駅,0:46
21番,1216,,1303,坂口屋前(3.9 km, 0:47)
坂口屋前,1303,,1437,22番平等寺(7.0 km, 1:33),0:35
22番,1512,,1538,新野駅(2.0 km, 0:26)
新野,1549,4564D,1604,阿南
阿南=立江駅~生名
夜全然眠れず輾転反側。なんでだろう。体は疲れているのに精神が高揚しているせいか。そういえば前回もなぜか日を追うごとに寝つきが悪くなった。まあウルトラマラソン前夜を思えばなんてことないなと諦める。それでもうとうとと4時間くらいは寝ただろうか。ウルトラのときは短眠3時起き5時スタートなのだから全然問題ない。これにかぎらずウルトラの経験は強みになってるなと思う。大抵のことはあれを思えばなんてことはない。目覚ましは5時にかけておいたが4時半に起きてしまう。朝食は食べないつもりだったけれど、空腹だったのでスティックパン2本を水で流しこむ。朝のトイレはなし。服装をどうしようか考えて、Tシャツ短パンにする。念のため薄手上衣と黒ジャージはもってあとは宿においていく。今晩もここに連泊なので身軽だ。5:20に出発。レストランはもう朝食の準備にかかっていた。
始発の徳島行き
乗車券
外はまだ真っ暗だ。雨上がりらしく路面が濡れている。空気は生暖かく半袖でも大丈夫そうだ。始発の5:42徳島行きは客が5,6人。女子高生がもう乗っている。遍路風の人はいない。徐々に夜が明けて立江に着くころは薄明るくなった。下車1名。立江でいいですかとワンマン運転手に確認される。
5:55に着いてすぐに歩きだす。立江寺横まで昨日の道をもどり赤い橋を渡るころ、前方の道を右から左へお遍路が1人歩いていく。あ、昨日のじいさんでは。次いでもう1人。早いな。あれは考えるに鮒の里泊まりで6時に早出したのだろう。やれやれと思ったが、たちまち追いついてしまった。手前は中年男性、おはようございますと抜く。先のじいさんは、耳が遠いのか挨拶を2回繰り返してやっと通じた。あとは快調なペースで歩く。キロ10分半くらいだから他の人よりはかなり速いのだろう。この後も何人か歩き遍路の人を追い抜いたけれど逆に歩行中に抜かれたことはない。早朝なので鈴の音を鳴らさないように杖は持って歩く。細い道で車はほとんど来ないし歩きやすい。人もほとんどいない。40分ほどで県道にでる。歩道がないので車道の際を歩くが、車が横をビュンビュン飛ばして歩きにくい。
勝浦町にはいって沼江にさしかかる。左手に立派な沼江大師がある。その少し先で道の反対側の家先からおばちゃんの声がかかる。こんなことすると危ないね、と道を渡ってこちら側へ。お接待しますと携帯クーラーボックスみたいな箱もっている。なんか飲み物だろうかと思ったら中はポケットティッシュが布の袋に入れてぎっしり。手作りなのだと。ありがたくひとついただく。横に紙がはさまっていて鶴林寺の紋様とおことばが印刷されており、内容を説明してくれる。早いねえ、どこからですか、と。ここで待ちかまえていては遍路に接待しているのだろうか。確かに今朝はぼくが一番だろう。札幌からというと、へえーと驚く。それは遠くから、いいこと(遍路)始められましたね、北海道行ったことある、とか少し雑談。朝から元気なおばちゃんだ。
勝浦町にはいる
勝浦川
道はやがて勝浦川に突き当たりT字路を左折。角にローソンがある。コンビニがあるならここで昼食を調達できたな。相変わらず車が多く歩きにくい。地図にあるあおき食堂は移転して1.3キロほど先の右側に立派な造りになっている。生名の集落にはいって道の駅方向の街道へ行かずに左の細道へ。左手に大きな民宿金子やが見えてくる。さすがは団体も泊まれる大きな宿だ。ここまで2時間弱。快調に歩いたので小休止とする。右手の消防団詰所に遍路用トイレがあり、ベンチがあったので休憩。お茶を飲み、靴ひもを締めなおす。このひもはすべってどうも甲が締めにくい。マイクロバスがやってきて分岐で止まり、歩き姿の外人グループがわらわら降りてきた。あれれ、また面倒だな、あれの先に出発しよう。早々に休憩を切り上げて腰を上げる。
大きな民宿金子や
鶴林寺への分岐
生名~20番鶴林寺
外人さん引率の男性におはようございますお先にと声をかけて出発。ここから左手へ遍路道を上る。細くて歩きやすい。すぐに家並みが切れ、舗装が終わって石の道になると靴がすべる。この靴底はほんとにすべるので要注意だ。山道向きではないな。途中から木の階段になり急になる。息が切れる。ジグザグを切るほどの急坂ではなく全体の距離も短いので焼山寺より楽ではある。しかし11月だというのに暑い。Tシャツに短パンで正解だった。それでも汗が滴り落ちる。お茶を飲み、塩飴をなめる。
一旦車道を横切った先で前方におばさんが見えてくる。その先にばあさんがいる。次々に抜く。ここまで早朝の立江から前には誰も歩いていなかったから、この人たちは金子やを遅出の人だろうか。途中に展望所があり眼下に那賀川とこれから渡る水井橋が小さく見える。その向こうの山がその先の太龍寺だろう。まだまだ先は長い。
車道から歩道へ
途中の水呑大師
案内図
急坂を上る
展望所から那賀川
そこからほどなく駐車場の脇に出る。横にトイレがある。ポツンと山門があり、くぐって歩いて行くと狭い境内に着く。身の置き所がないくらい狭いので右手階段上の本堂まで結局荷物ごと上り、やっとひとつベンチをみつけて荷をおろす。お参りしてベンチでスティックパンを1本食べていると、先ほど追い越したおばさんが横に来た。座れるところは他にないので席を譲り、階段を降りる。右手の古い建物が納経所だ。2人体制で、車で来た人は300円よけいに取られるのは焼山寺と同じシステム。奥のじいさんは親切で、下りの歩き道の案内をしてくれて、すべるので気をつけての言葉をいただいた。
20番鶴林寺~21番太龍寺
山門からの道が境内前につながる狭い交差点の建物の横を回り込むように太龍寺への遍路道がある。すぐに木の段々の下りになる。すべって歩きにくい。すぐ前方にじいさん4人連れがおしゃべりしながら歩いている。道が狭いので追い越せない。気づいて道を譲ってくれるようすもない。ふだらく越えは通ったことあるか、とか、さかりという地名があってどんな字書くと思うとか、くだらんおしゃべりしてないで気づけよ。しようがないのですみませんお先にと横を強引に通過する。あ、どうぞどうぞ。そう思ったら譲ってよね、とか思うのは修行ができてないのかね。その先に若い男がいて、彼はちょうど厚着が暑いのだろう止まって服を脱いでいたのでこんにちはと抜く。やれやれやっと歩きやすくなった。
鶴林寺から那賀川を渡って太龍寺へ
どんどん下る道
どんどん下る。一旦車道に出てまたすぐ遍路道へ。焼山寺からの下りのデジャビュ。やがて家の裏庭のようなごみごみとした感じのところを経て県道に出た。左手にトイレがあるらしい道標。道の向こうに遍路休憩所があって若者が休んでいる。こんにちはと先へ行く。右に行くとすぐに水井橋分岐。ポツンと自販機があったので水を補給。大切に飲んでいたお茶がなくなりかけていたのでちょうどよかった。この自販、Edy対応だった。ここまで鶴林寺から約40分。
分岐から水井橋へ
那賀川を渡る
水井橋は一車線の狭い橋で、車が来ると避けようがないが車など来ない。橋下は緑色の那賀川。渡って道はそのまま登りにかかる。分岐から右へ行く道は軽自動車限定、脱輪多しの注意書きがある。確かに狭い。というか左側はすぐ崖でガードレールも何もないし、軽だってそうとう注意しないと谷に落っこちそうだ。ただ軽とはいえ車が通れる道なので歩く分には歩きやすい。ネコ車を押しながら上るばあさんがいた。こんにちは、というと、ああびっくりした。ごめんなさい驚かせて。ネコ車にはロープとか。大したものは積んでない。作業にでも行くのかな。農地らしいものもところどころにある。さらに進むとこんどは杖とナタのような刃物?をもったじいさんを抜く。枝払いでもするのだろうか。若杉遺跡のあたりまではこんなふうにずっとなんちゃって車道が続く。その先が地図の登坂口でここから右手に木の段々の遍路道が分かれる。水井橋から25分くらい。
太龍寺への上り口
登坂口
ここまではラクだったけれどここからはきつい登りになる。これが最後だとがんばる。標高差にしてあと300 mくらい。途中道が崩れて鉄網板で補強してあるところもあった。今年の大雨のせいだろうか。暑い暑いと思いながら呻吟すること27分。ゴーンと鐘が聞こえる。ああもうすぐだとうれしい。広い分岐に出る。左は平等寺方面右は太龍寺。ここからは駐車場からの客も歩くなだらかな道だ。やれやれ。
だらだら歩いて山門に到達。まだまだ先がある。右手の建物に納経所とある。その先右手奥にあるのが大師堂。本堂はまだ先でどうも順序が逆のような気になるが、境内が細長く木々が鬱蒼として見通しがきかないのでよくわからない。やがて右手高台に本堂があらわれ、左手にすぐロープウェイ乗り場がある。お、11時の便にぎりぎり間に合いそうと急ぐ。乗り場の建物にはいると、きのこ茶のお接待をやっている。これは観光客向けだろう。受け取るけど飲めないくらい熱い。汗だくなのでちょっと引いてしまう。窓口らしきものはなく、お茶をくれた人に切符はどこで買うんですかと聞くとここですという。普通は山麓から往復切符だろうから山頂で切符買う人などいないのだろう。券売機も何もない。往復2470円は高いな。往復でいいんですか今日もどってきますかと聞かれる。当然の質問だ。
すぐに乗車。かなり込んでいる。発車すると、左手に捨身嶽の大師坐像をみて鉄塔を越え、一旦下ってから次の尾根の鉄塔を越えて那賀川を見下ろし、川向うの山麓駅へ。ロープウェイの10分は長い。山越え、川越えもなかなかダイナミックだ。乗ってよかった。山麓駅は大きく、お土産屋だのレストランだのでにぎわっている。まさに天上から下界に着いたという感じ。レストランにおいしそうなサンプルがたくさん。ロープウェイで運ばれているうちに汗が冷えて寒くなってきたので温かい物が食べたい。ここで昼食にすればよかったなと後悔する。
写真を撮っただけですぐに折返しの上りに乗る。車内はさらに込んでいて窓側はいっぱい。中央部に踏ん張って立つ。寒くてTシャツを着替えたい。四国とはいえ11月の山だからな。動いてないとそりゃ寒い。乗り合わせた観光客はみんな厚着しているし。もどった山頂駅内で前日買っておいたパンと水の昼食。これはわびしい。寒い。温かいきのこ茶がほしいけどさっきもらっちゃったし。これも修行修行。次の下り便に人が乗ってゆく。駆け込んでくる人も。係りの人は親切で駆け込み客を待っていてくれる。間に合ってよかったね。
さて出かけるとするか。きのこ茶の人がゴミ捨てますよと声をかけてくれる。なんて親切なんだ。お言葉に甘えてパンの袋とペットボトルを渡す。正面の石段を上ると本堂。右手に進んで左側奥に大師堂。さらに前進して左手に納経所と来た方へもどる。納経所窓口には、しずくが垂れるから濡れたものを置くなとか注意書きが細かい。心なしか納経所の対応もそっけない。
21番太龍寺~22番平等寺
山門を出てきた道を分岐まで戻る。歩きだすとじきにTシャツも乾いて温かくなってきた。この先ロープウェイはありませんと注意書きがある。細長い境内は見通しがきかなくてわかりにくいから間違える人もいるのだろう。水井橋からの分岐点を右手の平等寺方面へ。ここから1キロほどかなり急な坂道を下るとその先に駐車場があった。アプローチがこの坂では車で来た人も大変だろう。アクセスの便利さは断然ロープウェイの勝ちだな。朝抜いた帽子おやじをまた抜く。駐車場からは人も車もこちらの道をみたいな表示に従って下る。道が狭いので車は一方通行になっていて上りと下りの道が違っている。狭い道をだらだらと下る。車も通る道なので歩くのはラクだ。車はまったく来ない。左手から上り専用道が合流し、さらに下って行ってほぼ平らになったころ後ろから車が来た。横へよけて通してやろうと立ち止まると、その車も止まってしまう。あれと思ったら左手から車が上って来た。道が狭くてすれ違えないので下りの車がバックしてかわす。するとまた1台上りの車が。こりゃ車は大変だ。ロープウェイで来た方がずっと楽だろうに。ほどなく右手に大きな建物が現れる。龍山荘と新しい看板が立っている。あれれ廃業したんじゃなかったのか。再開したんだろうか。少なくとも看板は新しそうだけど。その先の県道分岐の右手に坂口屋がある。ここは大きい。これまで見た遍路宿で最大じゃないだろうか。このあたりに他の宿はないし団体もくるのだろう。でもあの道を考えると特に年寄りの団体はロープエウェイに乗ったほうがいいような気がするけどな。
ここから県道26号線になり、だらだら道を歩く。車もそこそこ通る。ふもとの阿瀬比集落に到着。休憩所にじいさんが4, 5人休んでいる。どうぞ、と言われるけど、大丈夫です、お先にと通過。健脚やなと声がする。休んでもいいけどまだ先があるし。国道195号線の交差点から細い遍路道へ分け入る。かなり道が交錯しているので注意して遍路道標を見失わないように進む。車道よりは歩きやすい。ほどなく山間に分け入ってまた木の段々の上りになる。やれやれこれでは今朝といっしょだ。大した登りではないのだけれど、朝から鶴林寺太龍寺と山を二つ越えた後なのでなかなかしんどい。竹藪の中の結構険しい上りを上りつめて見通しのきかない大根峠のコルに到達した。
大根峠への上り
峠のコル
その先は下りになり、急なので注意して下る。ほどなく周囲が開けて平らになり前方に夫婦連れ遍路の姿が見える。車道に出るところの遍路小屋にはいっていったので横を追い越す。あとは車道を左折して平地歩きとなる。もうここまでくれば近いはずなのに平等寺が遠い。疲れたなあ、コーラ飲みたいな。焼山寺のときはコーラコーラと思っていたのに今回はコーラ飲むのを忘れてたな、と思い出すと無性に飲みたくなる。畑一面にコスモスが咲いていてきれい。遠くに鐘がゴーン。ああもうすぐだ。やがて右手に駐車場、左手に山門があらわれ、平等寺に到着した。
山門横に自販機があったのでなにはともあれコーラを買う。山門をはいってベンチに荷物を降ろして飲むコーラがうまい。ここは平地で広々と見通しが良く、境内の配置がいいので動きやすい。荷物をおいて手水鉢を使う。水がとうとうと流れていて気持ちいい。正面に上って本堂。その横手の大師堂を通って下りて、山門横の開放的な納経所。ここまで持ち歩いてきた恩山寺手前でいただいたお接待の柿をここで大師像にお供えして手を合わせる。
コスモス畑
平等寺到着
山門
開放的な境内と本堂への階段
本堂前からの遠景
22番平等寺~新野駅=阿南
時計をみると新野駅に直行すれば予定より1本早いJRに乗れそうなのでここで打ち止めにする。この先阿波福井まで歩くという当初案もあったけれど、もう疲れた。早く風呂に入りたい。
平等寺から25分ほど車道を歩いて新野駅へ。ここも無人駅だが券売機があった。がらんとした待合室でおばさんに声をかけられる。高知の人でグループで車で回っていて、徳島の息子のところに行くのでここから分かれたとのこと。おしゃべり好きでいろいろと世間話。どうして遍路始められたんですかと訊かれ、まあなんか人生を考え直してみたいと思ったんですかね、とか。トイレへ行く間荷物見ていてもらえますかと頼まれる。他に人はいないけど。遍路は信頼されているんだな。
ほどなく列車がきて乗る。新野駅は片面ホーム1本。車内は空いている。阿南に着いてまっすぐファミマに寄り、同じ3種の弁当から幕の内を選んでホテルへ帰着。すぐに風呂の時間となる。今日は誰もいなかった。
新野駅
4.2014年11月3日(月) 阿南=新野~23番薬王寺~牟岐=徳島
コースタイム
出発地,出発時刻,便名,到着時刻,到着地(歩行距離, 所要時間),滞在時間
阿南,624,4525D,647,新野
新野駅,647,,1021,23番薬王寺(19.6 km, 3:34),0:25
23番,1046,,1051,日和佐(0.5 km, 0:05),0:36
日和佐,1127,,1432,牟岐駅(15.4 km, 3:05)
牟岐,1500,4564D/564D,1701,徳島
阿南=新野駅~23番薬王寺
5時過ぎに起きる。やはり寝付きは悪かったけれど昨夜よりは眠れた感じ。夜中は風がゴーゴー吹いて気温が下がる予報だった。前日と同じくスティックパン2本とお茶で軽い朝食。今日は荷物をすべて持って出る。Tシャツに白衣と黒ジャージを着る。6時過ぎにチェックアウト。う、寒い。明らかに昨日より気温は低い。風もある。駅で上を長袖Tシャツに着替えようかなと荷物をごそごそやっているうちに気が変わり、中に薄手の上衣を着ることにした。Tシャツ、薄上衣その上に白衣という珍妙な格好になった。
今日は昨日とは逆方向で下りの始発に乗る。徳島から来た単行気動車にはかなり客が乗っていてあれれと思ったが、部活の高校生がどっと降りてがらがらになった。阿南から乗車したのは3人。車内は釣りに行くらしい客などがちらほら。新野駅下車は2人。今日はもうすっかり明るい。すぐに歩きだす。踏切を渡って角のオレンジローソンから県道24号線へ右折。しばらく行って国道55号に突き当たってまた右折。あとは国道をひたすら南下する。幹線なのでさすがに交通量が多い。歩道があったりなかったりして歩きにくい。交換駅の阿波福井横を過ぎて鉦打で平等寺からの遍路道と合流する。遍路シールがあらわれ出す。
阿南から下り始発車内
鉦打トンネル
鉦打トンネルを通る。ここからいくつもトンネルがあるが、歩道が分離していないところはやはりこわい。中は照明で明るいのでマグライトをつけて歩いてもどれだけ視認性があるだろう。道路の端に緑線が引いてあってお遍路さんに注意みたいな標識がある。一応歩き遍路が歩く道という位置づけにはなっている。この先お遍路さん横断箇所という標識もあった。街道の左右の安全な方を歩くように指示されて、それが変わるところに横断歩道があるのだ。
グリーンライン
案内
福井トンネル
星越トンネル
久望トンネル
一ノ坂トンネル
車専用の新しい日和佐道路分岐を左に分けるとたちまち車が少なくなる。だんだん汗ばんできたのでここで黄色上衣をぬぐ。日が高くなってきて晴れているので、日向で無風だと暑く、日陰で風があると寒く感じてその差が大きい。暑いときは白衣の袖をまくってリュックひもにたくし込む。由岐分岐で海側の遍路道へ行こうかとも思ったけれど、やはり距離の短い星越コースを選ぶ。単調な車道歩きではあるが車が少なく歩きやすい。人は全くいない。左手に海賊船を模したドライブインが見えると日和佐は近い。日和佐道路と合流してまた車が多くなるとすぐに市街地となり、なんとなく見覚えのある一角に来たら右手が薬王寺だった。
お参りの人はそこそこいるが観光客ばかりで遍路風の人はまったくいない。下の手水を使ったあと、荷物をもって階段を上る。女厄坂33段、男厄坂42段で本堂前へ。海が見え景色がいい。荷物をおいて、お参り。意外と境内は狭い。ここは以前きたことがあるけれどこんな感じだったかな。男坂を下って左手に進むと納経所がある。観光地のせいか対応は事務的だ。そこから下り道を進むと下にもう一か所納経所があった。シーズンには込むのだろう。
23番薬王寺~日和佐~牟岐駅=徳島
さてこれで今回の札所めぐりは終わって、あとは次回に備えて牟岐まで先へ進んでおく。その前に昼飯にしよう。寺を出ると街道沿い右手に大きなうどん屋があるが、残念ながら準備中の札がかかっている。まだ11時前だ。左手には道の駅と併設の日和佐駅があるが、ここには供食施設がなく、食事はマップを見ろと書いてある。う~ん。駅の先の左手にドライブインはしもとというのがあり、やってるかなと思って入口をはいるとおかずの大皿がずらりと並んでいる。誰も人がいない。奥に声をかけるとやっているという。まあここでいいか。この店、本体は由岐に橋本屋という旅館があり、日和佐の手前右手には同名の遍路善根宿があって置いてある廃バス車体に泊まれるようになっている。その橋本屋系列のこれはドライブインだ。女の子が注文をとりにきたので、肉うどんにする。大皿のおかずは昼食バイキング用で、その後もどんどん料理が運ばれて並べられていた。しかしこの量。こんなにバイキング客が来るのだろうか。バイクの兄ちゃんが次の客で、あとは誰も来ない。肉うどんはどんぶりに山盛り。柔らかくコシのないうどんに出来合いっぽい牛肉煮が汁が見えないくらいいっぱい。完食したらさすがに満腹になった。
食べてすぐ歩くと腹具合が心配だったので、少し日和佐駅のベンチで休憩する。一向に便意の気配はないので、ままよと牟岐に向けて歩きだす。もっと小食にしておくんだったなと後悔するがしようがない。初めのうちは国道沿いに時折レストハウスなどがあるし、なんとかなるだろう。道は今日最長の日和佐トンネル690 mにかかる。分離した歩道があるので危険ではないけれどさすがに長い。車が来ると音がすごくてそれだけで恐怖だ。途中打越あたりの里におばあちゃんの集会所というのがある。無人だけどお遍路さん用にベンチがあり山から水が引いてある。冷たくておいしい。少し休憩する。暑いので黒ジャージの裾をまくる。日に焼けそうだ。
奥潟トンネル
日和佐トンネル
山河内トンネル
おばあちゃんの集会所
暫時休憩
あとは坦々と歩くのみ。辺川の手前左手のコインスナックおにのいわやでまた休憩。くしまさんの遍路記に食べ物が充実していると出てくるところだが、食べ物の自販機はカップヌードルしかなかった。迷わず缶コーラを買う。あとは牟岐まではもうちょっとだ。前から歩き遍路らしい男性がやってくる。久々に同類に会った。しかし方向が逆だ。こんにちわぁ。いやぁ軽快やねぇ、と明るい声で挨拶される。袖も裾もまくっていたからかな。それだけですれ違う。
牟岐町にはいる
コインスナック
左手に沿う牟岐川はわりときれいで堰には魚道がある。市街地にはいりガソリンスタンド手前で向ってきた軽自動車が路端にすっと止まる。よけて進むと後ろから呼び止められた。若い奥さんと男の子が降りてきて、男の子がお接待ですとお菓子らしい白い紙袋を差し出す。びっくりした。ありがとうございます。まったく予期してなかったのであわてた。すっと袋が出てくるところをみると事前に用意してあったのだろう。
今回は、柿とティッシュケースとお菓子と3回も行きずりの人からお接待を受けた。前回はなかったことだ。正式には南無大師遍照金剛と3回唱えて合掌し、納め札を渡さねばならない。ぼくはそのどれもやっていない。なかなかとっさにはできないものだ。そもそも納め札の準備をしていない。別に誰も催促はしないけれど内心がっかりしているかもしれない。これからはきちんと対応できるように心の準備をしておこうと強く思った。
やがて右手に開放的でこじんまりした牟岐駅があらわれる。到着。乗るつもりだった特急より1本早い普通に余裕で間に合った。時間があるので、この先鯖瀬くらいまでならまだ十分行けそうだけれど、疲れたのでここでおしまいにする。駅で紙袋を開けてみると羽二重餅のようだった。自販機でお茶を買ってありがたくいただく。ほのかに柚子の香りがする。
牟岐川の魚道
お接待のお餅
牟岐駅
駅名標
徳島行き列車
切符は徳島まで券売機で買えた。14:40くらいに折り返しの下りが到着。降りたのは1人。もう乗ってもいいようなので改札を通って乗る。単行ワンマンカー。牟岐から乗ったのは4人。来た道を巻きもどすかのように進む。歩いた道が車窓に見えて感慨深い。あっという間に日和佐だ。日和佐から遍路姿女性が1人。新野から遍路らしい人数人。みんな一区切りで帰るのだろう。新野からは昨日乗ったのと同じ列車だと気づいた。昨日より込んでいるな。連休最終日だからかな。気温がだんだん下がってきて寒くなってきた。昨日もそうだけれど歩いているうちはいいが止まると汗で濡れたシャツが冷えて寒くなる。車内では着替えられないので薄手上衣を引っ張り出して白衣を着替える。それでもまだ寒くてがまん。阿南からは車掌が乗務する。少しずつ客も増える。日が落ちてきた。徳島に到着。
外は肌寒い。地下に降りて3日間預けたコインロッカーの荷物を出す。同じく荷物を出している遍路男性がいた。キャリーバッグを引いて駅前すぐのサンルートへ。エレベータで3階がフロント。10階の1010室。広くて立派だ。シティホテルのよう。まずは買い出しだ。フロントに寄らなくてもエレベータで1階に降りられるので便利だ。近くのサンクスで手早くすませる。もどってすぐに11階の大浴場へ。鍵だけもっていくと受付に人がいてタオルとロッカーキーを貸してくれるシステム。これは便利だ。風呂はゆったりして空いていた。まさに極楽。ゆっくり温まってもどる。弁当と今日はビールで祝杯。3日ぶりなのになぜか味はいまいちだったな
5.2014年11月4日(火) 徳島=神戸=札幌
コースタイム
出発地,出発時刻,便名,到着時刻,到着地(歩行距離, 所要時間),滞在時間
徳島駅,900,阿波EXP58,1124,神戸空港
神戸,1355,SKY175,1545,千歳
徳島駅=神戸=札幌
居住性のよい部屋で酔っ払ってゆっくり寝て、朝6時前に起きる。6時からの風呂に行ってみたらすでに5, 6人先客がいてびっくり。もどって昨日買ったサンドイッチとカフェラテでのんびり朝食。8時過ぎにチェックアウト。同じビルの1階の土産物屋で鳴門金時ポテト購入。5個入り1400円もするうえに、朝からやる気のない店員にげんなり。外は快晴で涼しく気持ちよい。出張着の厚手のジャケットがぴったり。
神戸空港行きバスは15分前に入線。今度は1A席。高速バスはほんとに安くて最前列が事前座席指定できるから快適だ。特筆すべきは窓が大きくて掃除が行き届いてきれいなので視界が最高なこと。JR車両の窓の汚れには辟易することが多いだけに、これからはJR なんかよりバスに乗ろうと思ってしまう。今回は本四海峡バス。乗車時に乗車券にハンコを押して降車時に回収するシステム。キャリーバッグと風呂敷包みの笠は荷物入れへ。杖だけ持って乗る。6月に乗ったJRバスと違って車内案内はほとんどなく、到着時刻のみとあっさりしている。必要な事項はビデオを流すだけ。途中本四バスと行き合うたびに挨拶。その回数の多いこと。どれだけバスが走ってるんだろうか。今回も阪神高速渋滞のため北神戸線へ迂回、長大トンネルを通って神戸へ。乗車は徳島駅13名、松茂8名、鳴門1名。降車は舞子3名、三宮8名、新神戸8名、空港3名。新神戸下車客が意外と多い。新神戸からは直進南下してトンネルでポートアイランド、その先の橋で空港へ。4分早着。
まだチェックイン開始前だったので3階の見晴らしよい洋食レストランでオムライスとビールの昼食とする。SuicaやEdyが使えた。2階にもどりSKYの自動チェックイン機へ。荷物の個数をきかれ、3個と入力するとなんと荷物タグがずらずらと出力される。自分でくくりつけるのだと。杖や笠はどうつければいいんだろう。X線検査のところで係員に申告すると、カウンターでやりますからという。今回はスムーズに通ってカウンターへ。杖は長さを測って120センチ以上なので超過料金になりますと500円とられる。あとは笠も杖もそのままタグを貼っただけ。箱に入れるほど厳重にしなくてもいいとは思うが、杖は杖袋のままむき出しなのでちょっと心配だ。次に手荷物検査。空いている。あらかじめ缶ペンを取り出しておいて、往きにひっかかったのでと申告したけれど、何事もなく通過した。あとは搭乗待合室でひたすら待つ。
神戸空港はこじんまりとしてローカル空港のようにのんびりしている。優先搭乗のあとは窓側A,H席、次いで通路側席の順に呼ばれる。10分延発。60%くらいの乗り。天気がよく下界の景色がきれいに見える。東へ離陸した後右旋回して明石海峡大橋までもどってまた右旋回して北上。若狭湾から琵琶湖遠望。白山、右手遠くに富士山。手前に先日噴火した御嶽山が煙を上げている。南アルプス、中央アルプス、北アルプスは上辺が雪景色。富山湾から新潟佐渡、庄内平野、十和田湖まできれいに見えて退屈しない。千歳空港には定時到着した。笠も杖もそのままターンテーブルに回ってくる。特に損傷はなく、大げさに箱に入れたり梱包しなくても大丈夫みたいだ。