四国歩き遍路紀行1(本篇)
目 次
第1期 2014年6月5日(木)~8日(日)第1番霊山寺~第17番井戸寺~徳島駅 96.7 km (累計96.7 km)
第2期 2014年11月1日(土)~4日(火)徳島駅~第18番恩山寺~第23番薬王寺~牟岐駅 86.7 km (累計183.4 km)
第3期 2015年6月3日(水)~8日(月)牟岐駅~第24番最御崎寺~第30番善楽寺~文殊通 169.1 km (累計352.5 km)
第4期 2015年10月24日(土)~28日(水)文殊通~第31番竹林寺~第37番岩本寺~土佐入野駅 142.1 km (累計494.6 km)
第5期 2016年6月1日(水)~7日(火)土佐入野駅~第38番金剛福寺~第43番明石寺~上宇和駅 200.2 km (累計694.8 km)
第6期 2016年10月22日(土)~26日(水)上宇和駅~第44番大宝寺~第53番円明寺~伊予和気駅 146.1 km (累計840.9 km)
第7期 2017年5月31日(水)~6月6日(火)伊予和気駅~第54番延命寺~第70番本山寺~高瀬駅 210.9 km (累計1051.8 km)
第8期 2017年10月21日(土)~26日(木)高瀬駅~第71番弥谷寺~第88番大窪寺~第1番霊山寺 156.8 km (累計1208.6 km)
→ 四国歩き遍路紀行2(別格篇)はこちら
はしがき
-
はじめに
いつの頃からか四国遍路が気になって一度歩いて回ってみたいと思っていた。調べてみると全行程約1200キロ、通しで歩いて回ると40日くらいかかるという。それではとても無理だ、定年後の夢だ。そんなおりに偶然くしまさんのwebページ「掬水へんろ館」を知った。そこにはいろいろな情報とともに彼が休暇をやりくりして6回に分けて回った区切り打ちの遍路紀行の様子が詳細に綴られていた。なんと楽しそうなんだろう。そして短期間ずつ区切れば在職中に回ることができるのだと希望がわいてきた。しかし北海道から四国は遠い。何回も行ったり来たりすればそれだけお金も時間もかかり効率が悪すぎる。まったく言うは易く行うは難しだ。そんなことをぐずぐず考えているうちにどんどん時間が過ぎていく。やはり定年後などといわずできるうちにやってしまおう。年に2回回るとして春は6月の大学祭休校日を使えば授業への影響は最小限で済むし、秋は幸い例年10月末に高知の高校の進学相談会に出向くのでそこに休暇を入れれば都合がよい。というわけで60歳の声をきく2014年から2017年にかけて4年がかりの区切り打ち歩き遍路の旅がスタートした。これはその記録だ。
歩き遍路をする人は多くその紀行文はweb上にたくさんあふれている。ぼくもいろいろなブログを参考にしたり情報を得たりさせてもらった。このうえ屋上屋を架す意味があるのかという気もしたが、遍路道歩きは、時代、季節、天候、年齢、コースなど人によって千差万別であり、一つとして同じものはない。年によって道路や宿屋の改廃があり、季節や天候によって同じ道が違う様相となり、年齢や体調によって所要時間や1日のコース取りが大きく変わる。そしてなによりその人の気性、気分によって受ける印象も大違いだ。web上の情報は所詮は他人の記録に過ぎず、正直参考にならない部分も多かった。不便を感じたのは、日付がはいっていても年号がはいっていないものが意外と多いのと、年齢や体力データやきちんとした所要時間がほとんど書かれていないことだった。読み流すならいいが記録としては不備であり、予定を組む参考にはなりにくい。そのあたりに留意すればこれから回ろうとする人の参考になる記録とすることは十分に可能だろう、そう考えて拙い紀行文を公開することにした。これから歩こうとする方の参考にいくばくかでもなれば幸いだ。
- 行動計画
行程を計画するときの歩速度は平地で休憩なしでキロ12分、休憩込みでキロ14分で計算した。実際にもだいたいそれくらいに収まっている。なお、お遍路を歩いた年代は60-63歳、人間ドックはほぼ正常、ふだんの運動はジョギングを年間1500-1800キロでフルマラソン、ウルトラマラソンのレースを年1回ずつ走っている(タイムはそれぞれ4時間半、13時間半)。
休憩は札所の多いところは寺ごとに休めるので予定に入れず、札所間の長いところは1時間に5-10分を標準とする。暑い時期などつい腰を上げるのがおっくうになるので時間を計ってずるずると休みすぎないように注意した。
- 遍路用品
へんろみち保存協力会発行の「四国遍路ひとり歩き同行二人」の解説編地図編は必読(それ以外の市販のガイドブックは観光用途以上のものではない)。そこに服装や携行品なども詳細に載っているが。必ずしもそれにきちんと従う必要はない。ぼくの場合、遍路用品で持って歩いたのは杖、笠、白衣、納経帳、経本、納め札、線香、ロウソクだけだ。このうち納経帳、経本、納め札は遍路用品店のweb通販で事前購入し、線香は家にあったもの、ロウソクはダイソーで購入。線香、ロウソク、ライターは最初100均で買った墓参セットに入れていったが、かさばる上に扱いにくく、その後は缶ペンに入れて持ち歩いた。線香は折れやすいので要注意。一区切りで打つ札所数は限られるのでだいたいそれで足りた。
経本は本尊真言が各種収載されているが、なぜか八十八カ所の中にはレアな本尊の札所があり、それは載っていない、本堂前に掲示されているところもあるが目立たないので、ぼくは事前に調べて書き出したものを持って行った。
杖、笠、白衣は最初の歩きの時に1番霊山寺門前の門前一番街で現地調達した。詳しいおばさんがちゃんと見つくろってくれる(第一期の部参照)。杖と笠は実用的にも必携で、杖は歩く時の支えになり山道の上り下りでは大きな助けになるし、笠は晴れた日の日除け、雨の日の雨具として優れもので、特に傘を差す手を取られないので非常に具合がよい。お遍路以外の日常にも使いたいくらいのものだ。笠のひもはマジックテープの笠フィットに交換するのがよい。
杖は130 cm長が標準で長さに関する限りほぼそれしか売られていない。人によって身長はさまざまなのに長さのバリエーションがないというのも不思議だが、元来は歩く人のためではなく車や交通機関で回るときに邪魔にならないように短めにされているらしい。ぼくは身長173 cmだが、歩いてみると平地でもやや短いし、険しい山道の下りなどで支えに使うときなどは明らかに短すぎた(ちなみに杖はカバーではなく下の木の部分を握る)。長い杖が手に入らないものかとwebで探したところ、表装の詠智会というショップで長寸タイプ146 cm長の杖を売っているのを見つけ通販で購入して3回目からはそれを持ち歩いた。
区切り打ちの場合杖と笠を毎回持ち運ばなければならない。飛行機は杖も笠も機内に持ち込めないので預けることになる(一度だけ笠は持ち込んでくれといわれたことがある)。笠は大きなビニール袋に入れられ、杖は箱に入れてくれることも杖袋のままシールを貼られることもあり、曲がるかもしれませんとか脅かされたり破損しても文句言いませんとサインさせられたこともあったが、笠杖ともに壊れたことは一度もない。
- 服装
服装は基本は半そでTシャツにハーフ丈のパンツで6月はこれで十分。10月末の朝晩はさすがに寒いので長袖長裾のトレーニングウェアを重ねることもあったが、基本的に歩いていると発熱するのでもともと薄着に慣れていることもありすぐに脱いでしまうことが多い。いろいろ問題になることの多い雨具だが、ぼくはポンチョだけで済ませた。笠でしのげる小雨は別として本格的な雨となると雨具は必携だ。しかしセパレートのレインウェアは着脱が面倒だし蒸れて暑い。おまけにザックを別にカバーしなければならない。ポンチョなら上からかぶるだけなのではるかに簡単だ。本文にも書いたように着脱にはちょっとコツが必要だが慣れてしまえばどうということはない。難点として裾が広がって膝下が濡れることが指摘されるが、もともとぼくはハーフパンツなので全然問題にならなかった。
- 靴
靴は悩ましいところで、遍路道の大半を占める平地の舗装道なら軽めのウォーキングシューズでいいが、岩のごろごろした山道や急坂を歩くこともあるので、あるていどしっかりした軽登山靴がほしくなることもある。ぼくの場合は、Merrellのモアブというハイキングシューズの踵の浅い方のモデルを履いた。平地ではちょっと重いがしっかりしているので歩きやすい。ただソールが滑りやすいのが欠点で濡れた岩肌は石段は要注意だった。あと1200キロの耐久性はなく、かかとが擦り切れたので最後の方はシューグーで修理しながら履いていたが、ソールの材質のせいかすぐに剥がれてきたのはマイナス点。
マメ対策にはテーピングが有効。面倒だがきちんとやればほとんどマメはできない。やり方は上記解説編参照。
- 宿
宿は通し打ちの場合歩きながら前日か当日に電話してとるという人も多いようで、よほど混むシーズンや人気宿でないかぎりそれで大丈夫みたいだが、ぼくは往復が固定されている区切り打ちで行程も事前に決めてあるのですべて事前に手配した。遍路宿もピンキリで宿の情報はネットに山のようにある。先入観に左右されるのも一長一短だがひどいところもあるらしいので下調べくらいはしたほうがいいと思う。
- 札所と納経
宿よりも寺で不快な思いをすることがある。たいていの札所は丁寧で愛想もいいが、88もあれば中には寺の対応のひどいところもある。我が物顔の団体に待たされることもある。遍路中は十善戒といって怒ってはいけないことになっているが、そうはいっても腹が立つ。こんなんで300円の納経料を払うのか。ただ、歩いたのが繁忙期でなかったので納経所で待たされたことはほとんどなかった。
お遍路はスタンプラリーではないといわれるが、寺社の朱印集めがブームになっているし、納経帳に各札所の朱印記帳を集めていくのは楽しいものだが、全部回ると手間も費用もばかにならない。行き会った人で複数回回っている人は記帳を省略している人も何人もいた。二度目は重ね印といって印だけ押すシステムで何度も回って頁が真っ赤になるのをありがたがる向きもあるようだが、全然美しくないと思う。
- その他
お接待は今の時代ほんとにこんなことあるのかなと思うが実際にあるので最初はびっくりする。すごい文化だと思う。お遍路の格好して歩き出すとみんなに見られているようで気恥ずかしく感じるが、そういう土地柄なので思ったほど誰も気にしていない。遍路中は「お遍路さん」と呼びかけられることが多い。名前でも肩書でもなくそう呼ばれるのがぼくはとてもうれしかった。
最後に大事なのがトイレ。ぼくは胃腸が弱いので本文にも頻繁に出てくるように遍路歩き中のトイレにはいろいろ苦労した。保存会の地図にかなり記載があるし、ネットには歩き用のトイレマップもあるが、とても全行程の改廃を網羅したものではない。コンビニなどない田舎道も多いのでこればかりは運まかせだが、不思議となんとかはなった。お大師様のおかげかもしれない。
ご質問等あればこちらへどうぞ。