どこからこんなものがでてきたのかというと、ライス大学の化学教育プログラムの一環ということのようです。子供たちに化学に興味をもってもらうためのツールのひとつというわけですね。なるほどねー、こうしてみるとベンゼン環だってこわくないかも(笑)。さて、例によって合成法をみてみましょう。
分子骨格はフェニルアセチレンでできているので、これをパラジウム触媒によるハロベンゼンとアセチレンのSonogashiraカップリングでつくることにして、上半身と下半身を別途合成し、最後につなぎあわせる方法がとられています。母核になる置換ベンゼンをうまくつくるところがおもしろく、腰部分の原料となる3,5-ジブロモヨードベンゼンをp-ニトロアニリンからつくるなんてのは置換ベンゼンの合成戦略の練習問題をみるようですね。頭部がベンズアルデヒドのエチレンアセタールでできているところがミソで、適当なジオールを加えてレンジでチンするとアセタール交換が起きていろいろな帽子をかぶったナノ職業人をつくることができます。
特に困難な合成というわけではなく、何らかの機能性をもっているわけでもありません。単に、見て楽しい。これぞおもしろ化合物の鑑ではないでしょうか。
ref. S. H. Chanteau and J. M. Tour, J. Org. Chem., 2003, 68, 8750.