トリフォリアファンは分子が3回対称軸をもつ三つ葉のクローバー型をしているところから名づけられました。四つ葉じゃないのが残念ですが、中央がベンゼンなのでいたしかたありません。この三つ葉の合成は、[2.2]パラシクロファンのベンゼン環をつなぐエチレン鎖をハロゲン化、脱離を繰り返してなんと三重結合にしたものを3分子付加環化させて一挙に中央のベンゼン環を構築しています。途中のアルキン(パラシクロフィン)は直線であるべきsp炭素がほぼ直角に折れ曲っている高度のひずみ分子で、もちろん単離することはできません。
他方、デルタファンの方はスーパーファンやチョウチン合成にも用いられた常套手段である熱反応によるo-キシリレンの付加反応でつくられています。こちらの分子は中央部に空洞をもち、他の分子をとりこんだりできそうです。事実、銀イオンが半分はまりこんだ形の複合体がつくられています。
ref. trifoliaphane: M.Psiorz and H.Hopf, Angew. Chem. Int. Ed., 21, 623 (1982); deltaphane: H.C.Kang, A.W.Hanson, B.Eton and V.Boekelheide, J. Am. Chem. Soc., 107, 1979 (1985).