北海道大学一般教育科目「化学II、III」(基礎有機化学、2年生前期)の講義資料のダイジェスト版です。本科目は複数の教官により担当されていますが、ここにある内容は2002年度までの農学部川端担当のクラス向け(41,42組)のものです。
本内容に大幅に加筆したものが化学同人「ビギナーズ有機化学」(2000.10刊)です。2001-2002年度はこれを教科書として使用しました(後記:現在は「ビギナーズ有機化学(第2版)」が刊行中)。
<まえがき>
有機化学の内容は広範に渡り、とても半期13回程度の講義時間では消化しきれません。しかも化学IIIの受講学生は将来化学を専攻する人ばかりではなく、様々なレベルの人が混じっています。受験で化学を選択しなかった人はもちろん、中には高校で化学を選択していない人すら過去にいました。
そこで、本講義ではできるだけ平易にしかも非専門の人にも興味をもってもらえるような内容をめざしています。いうまでもなく、生物の体を形作る成分の多くは有機化合物であり、生体反応は有機反応であるといっても過言ではありません。有機化学の理解なしに生命科学を論ずることは不可能です。にもかかわらず有機化学が一般的に好んで学ばれているかというと残念ながらノーと言わざるを得ません。というよりも、「亀の甲」という代名詞で疎んじられ、どちらかというと難しくてわからないものという印象が強いと思います。しかし、有機化学は本当は面白いのです。構造式や反応式、化合物の名前や性質を暗記するだけで終わってしまえば、たしかに難しくつまらないでしょうが、それぞれの化合物の構造、性質、反応がどうしてそうなるのかを論理づけてみることができれば、有機化学がいかに論理的で明快な学問であるかに気づいていただけると思います。この講義の目標とするところは、有機化学に対する先入観を打破し、一見複雑に見える事象が簡単な理論で明快に説明可能なことを示すことにあります。すばらしいですね、そんなことできるのでしょうか(笑)。
内容は以下の通りです。ご覧になっておわかりのように、一応基本的な有機化学の内容は押さえてありますが、かなり基礎にしては特殊な部分も含まれています。これは単に知識の詰め込みに終わらず、有機化学の魅力について、「おもしろい!」、「なぜだろう?」と少しでも肌で感じてほしい、という願いのもとに加えられているものです(単に教師の個人的趣味という話もありますが(^^;;)。
生物機能化学科、応用生命科学科など化学系の学科を専攻する学生には、農学部で「有機化学I,II」の講義がありますので、そちらで詳しいことは教わることになります。また、関連科目として「機器分析化学」もぜひ受講されることを強くすすめます。
内容は、図と説明がペアになっています。図は別個のフレームに表示されますので、並べて読むことができます。
<教科書>
・ビギナーズ有機化学、川端著、化学同人、2000、¥2200.
本ページの内容にくわしく解説したもの。おもしろ化合物、有機化学用語集付き。練習問題の解答集は→こちら。
<参考書>
・有機化学の基礎づくり、G.W.Hornby & J.M.Peach著、熊懐、安藤訳、化学同人、1994、¥1800.
ちょっと変わった教科書。私の講義の全体の構成はこの本に準拠しています。
・はじめて学ぶ大学の有機化学、深澤、笛吹著、化学同人、1998、\2200.
本講義資料の内容にとても近い教科書。もう少し早く出ていたらこの資料はなかったかも。
・ベーシック有機化学、山口、山本、田村著、化学同人、1998、\2800.
最近は、こういった入門的なよい教科書が増えました。オーソドックスな内容です。
・ハート基礎有機化学(改訂版)、H.Hart著、秋葉、奥訳、培風館、1994、¥3900.
基本的な内容を網羅してかつ平易に記述されたものとしておすすめできます。
私の講義で物足りない人はどうぞ。
<追 記>
本内容は、私の個人web page上に公開しております。有機化学を基礎から勉強したいという方のお役に立てれば幸いです。ただし、資料の性質上、説明の部分は最小限に留めてありますので、ご了承ください。
また、担当教師の力量不足により、内容に間違いや不備なども多々あろうかと思います。お気づきの点がございましたら、ぜひどんなことでも こちら までご一報ください。率直な感想、専門的な疑義などなんでも歓迎します。できるだけより良い内容に改訂していきたいと考えています。したがって、本資料の内容は予告なく逐次修正することがあります。